ソフトコンタクトレンズ(SCL)の中心厚は添付文書に記載されていますが、周辺部厚も
強度や装用感の観点から検討の必要があります。
位相差顕微鏡は異なる屈折率をもつ物質を透過した際の位相差や光線が物質により遮る際の
回折を応用した顕微鏡であり、透明な対象の観察のために広く普及しています。
当院とあけお眼科研究所では、SCLの周辺部を観察するため位相差顕微鏡を用いて
周辺部厚を計測しています。
AQUALOX® (AQ)
(-3, -7.5, -12 Diopter (D))
-3 Diopter 中心厚 (1日間 70 m,2週間 70 m)
BAUSCH + LOMB Co. Rochester, NY, USA
ACUVUE OASYS® (OA)
(-3, -7.5, -12 Diopter (D))
-3 Diopter 中心厚 (1日間 85 m, 2週間 70 m)
Johnson & Johnson Co. New Brunswick, NJ, USA
-3D, -7.5D, -12DにおいてOA はAQより厚みがありました。(矢印 : 厚みを測定した位置)
OAは20 μm近辺、AQは10 μm近辺でした。
t検定ではすべての度数においてAQとOAの間で有意差があり、
2元分散分析でもType間での有意差が認められました。
AQ では近視度数にかかわらず、厚みに変化はありませんでしたが、
OAでは-3Dと-7.5Dは-12Dより厚い傾向がありました。 (矢印 : 厚みを測定した位置)
t検定ではAQとOAの間で、すべての度数で厚みに有意差があり、OAでは-12 Dは
-3 Dより有意に厚みが薄くなっていました。
2元分散分析ではtype間で有意差があり、度数の間でも有意差が認められました。
これまでの研究によりSCLの種類により周辺部厚には相違があることが判明しました。
今後は温度、湿度などの環境変化が周辺部厚に時間経過とともにどのような影響を与えるか調べるとともに、
他の種類のSCLでは異なった影響となるのか、さらに検討していきたいと思っています。
将来は、 SCLとヒト人工血清を用い、ヒトリゾチーム遺伝子(Lyz)発現との関連についても研究を進めたいと考えています。
1.明尾潔、明尾庸子、明尾慶一郎、飛田恵子、加藤帝子、大森美香: ヒト血清点眼におけるリゾチーム遺伝子発現の定量. 臨床眼科77(5):655-661 2023
2.明尾潔、明尾庸子、明尾慶一郎、飛田恵子、加藤帝子、大森美香:ソフトコンタクトレンズにおける周辺部厚の位相差顕微鏡による計測.臨床眼科78(3):372-378 2024
3.明尾潔、明尾庸子、明尾慶一郎、飛田恵子、加藤帝子、大森美香: 37°C度におけるヒト血清点眼におけるリゾチーム遺伝子発現量の経時的変化.臨床眼科79(3):375-381 2025
1. 明尾潔、明尾庸子、明尾慶一郎、飛田恵子、加藤帝子、大森美香:ヒト血清点眼におけるリゾチーム遺伝子発現の定量 第76回日本臨床眼科学会 東京 2022年 10月.
2. 明尾潔、明尾庸子、明尾慶一郎、飛田恵子、加藤帝子、大森美香:ソフトコンタクトレンズにおける周辺部厚の位相差顕微鏡による計測 第77回日本臨床眼科学会 東京 2023年 10月
3. 明尾潔、明尾庸子、明尾慶一郎、飛田恵子、加藤帝子、大森美香: 摂氏37度におけるヒト血清点眼におけるリゾチーム遺伝子発現量の経時的変化.第78回日本臨床眼科学会 京都 2024年 11月